森村泰昌展 2016.07.01 日記 先日、森村泰昌展に行ってきました。 作品は肖像写真なのですが、森村さんご本人が変装して、ゴッホやレオナルド・ダ・ ヴィンチ、デューラーなどの名画の肖像画作品になりきって写真を撮ったものです。 それが見事な変装ぶりで、ただ同じ格好をするだけではなく、輪郭も鼻の形も、特殊 メークでそっくりにし、さらに絵にみえるように顔や服に筆で描いたような凸凹(マ チエール)がメーキャップで施してあります。複数の人物が描かれている絵画の場合 は、一人ひとりすべてが森村さんなのです。 もとの名画に、人物の背景に椅子などの小道具があり、油彩の粗いタッチで描かれて いたならば、その椅子までも本物そっくりにメーキャップ?をして撮影してありま す。 「写真のような絵」はよくありますが、「どうみても絵にしか見えない写真」。こう いう発想は思いついた人の一人勝ちとも言えますが、あまりにも徹底されているので 簡単に真似できるようなものではありません。この鼻をつけるのに、いったいどう やったんだろう。この服のレースは?この美女の玉のようなお肌は?・・・ 何のためにそこまで手の込んだことをするのか?なんて考えてはいけません。芸術で すから。そういう作品なのです。 昔美術の教科書で見た絵が、この人の写真で再現されている面白さ。ただのモノマネ ではすまされない迫力と、徹底した作者の気迫がせまってきて、もとの絵を知らなく てもトリックアートを楽しむ感覚で、あっという間に展覧会の出口にきてしまいまし た。それでも3時間は軽く経っています。旅行などに行く余裕はなかったとしても、 美術館なら現実から離れて充実した1日を過ごすことができますね。